におぐっ! ~嗅覚を働かせてにおいを感じ取る、その行為をあなたはなんと言いますか?~
意図していなかったのになぜだか
道→バス→北大路バスターミナル→金閣寺→ 金閣寺に行ったことのない京都の中学教師、
と 超個人的な連想ゲームにぴったりはまってしまいました。
よかったらどうぞ~
- 上ル?下ル?未知なるミチ1 ~ ”通り”vs”通” 京の送り仮名のナゾ~
- 上ル?下ル?未知なるミチ2 ~ ”道→みち”、”店→みせ” 京の読み仮名のナゾ~
- 真の国際交流@北大路バスターミナル
- 金閣寺に行った事のない京都の中学教師
そしてきょうのもなぜか中学校がらみ。 この話をお聞きください。
物質と物体
中学校の授業参観というものに行ってきました。
このときの参観者は私ひとり。
理科の授業で、この先生の授業はとてもおもしろいとの 評判の先生です。
子供たち、中学生ってこんなに可愛かったっけ? と思うくらい元気でアホで楽しかったです。
この日は“物質”と“物体”はどうちがうのだ? という話から始まりました。
話はおもしろくて、私もこんな先生に中学時代に出会っていたらその後の人生もっと違っていたろうに、と思いながら先生と生徒の漫才みたいなかけあいを楽しく聞いておりました。
話は進み、目の前になにか物質があるとして、 それが何なのかをどうやって調べるか、という話題になったのです。
つぎつぎと意見がでて、先生がそれぞれに短くコメントしていきます。
そのときひとりの男子生徒が立ち上がり、元気よく言ったのです。
「におぐっ」
私はぷっとふきだし、次に起こるであろうことをすぐさま想像しました。
つまりクラスが爆笑の渦にまきこまれるとか、
その男子生徒以外全員で吉本みたくズッコケるとか、
このクラスの人気度No.2くらいの男子が“シーン”と言ったあと、しばらくして 沈黙に耐えられなくなった女子数人が笑い出すとか。。。
ところが何も起こらなかったのです。
それどころか先生、気の利いたコメントもせずに
「うん、そうだねー、におぐ、ね、はい、他には~?」
と、まるで何もなかったかのように授業を進めていったのです。。。
私は興奮のるつぼに一人とり残されてしまいました。
なにーー?先生っ、みんなっ、今の聞こえなかったの~
いや、先生が復唱しているのを確かにこの耳で聞いた。
なんで?どうなってんの?
ってか、そこ笑うとこじゃないのーー! ってか、先生、なんで流すのーー!
この状況を全く理解することができず私は、
この男子生徒のクラスにおける立ち位置とか、
教師と生徒の関係(評判の先生とはきいていたけど 実はわけありなのでは?現に今、力で生徒たちの感情の発露を封じ込めているように見えたぞ!というような)、
果ては昨今の日本の教育問題(もしやみんなでグルになって 大人の私をからかってんじゃなかろうか。教師ともあろうものがいたいけな中学生を そそのかし、そんな大それたことを企てるとは!というような)
にまで思いをはせながら頭の中はグルグル。
目をシロクロさせて一人立ちつくしておりました。。。
におぐ
におぐ・・・
きくと、これ、京都ではごく普通のコトバのようです。
「これ、においでみー」とか普通に言ってるみたい。
それは私の中では“匂う(におう)”もしくは“嗅ぐ(かぐ)”なんですけど。
私はその男子生徒がその二つを勝手にドッキングさせてウケをねらった と思ったのです。
いやーびっくりでした。
この期におよんでまた未知なるコトバに出会ってしまった。。。
ところでこれ、 におがない、におぎます、におぐ、におげば、におごう、 の、ガ行五段活用なのかな?
さきほどの“においでみー”は、“におぎてみー”を 言いやすいように変化させたものか。
きっとそうなのだろう。。。
いやちょっとまてよ、におぐって、私は初めて聞いたけど、これもしかして“におい”の原型なのかも。
つまり、におぐ、の名詞形、“におぎ”、が、なまって、 “におい”、になったとか。
京都だけに 古語がみやびな宮中言葉として残って現代に至っている、 とかなんとか。
どなたかご存知じゃないでしょうか?
”におう”や”覆う”の活用形
それはそうと“におう”という動詞はワ行五段活用?
におわない、においます、におう、におえば、 におおう・・・
におえば、まではありそうだけど、 におおう、はかなり苦しいです。
こうなったらにおごう、の方が言いやすいですね。
話は変わりますが、覆う、という動詞も困ります。
覆わない、覆います、覆う、覆えば、覆おう
変換したらちゃんとでてきたから理屈上はこうなるんだろうけど・・・
こんな言葉を使わなきゃいけないシーンになったらどうしよう。。。
例:“これ、シーツでおおおうよ。”
間違いなく途中で自信がなくなって、最後まで言い遂げることはできないと思う。。
ま、今まで困ったことはないから、 これからも多分そんなシーンはなかろうと安心しています。
あ、いや、一度だけあった!だから覚えてたんだったわ。
途中で自ら声をフェードアウトさせ、なんとかその場はごまかして 家に帰ってから調べよう、とか思っててそれを忘れてたんだっけ。。。
これにも“におぐ”みたいな言いやすい言葉があるといいのにな。
“おおぐ”とか。
かずみちゃん
ちなみに私の実家の九州の地方都市では、におぐ、に当たることばは 、かずむ、です。
いいにおいでも、いやなにおいでもとにかく“かずむ”。
例:“この花すっごくいいにおいだよ。かずんでみて。”
活用は、かずまない、かずみます、かずむ、かずめば、かずもう、 の、マ行五段活用。たぶん。
ときどき、“かずみ”さん、という名前の人がいますが、 その方がいくら美人でも、つい“かずむ”を思い出してしまうんです。。。
理屈では、かずむこと、という意味の名詞で、かずみ、ってありそうだけど 実際にはきいたことないです。でもつい・・・
全国のかずみさん、そしてそのご両親、本当にごめんなさいっ。
追伸:ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございました。
もうちょっといけるわよ、って方、どうぞ“続きを読む”↓ も読んでくださいませ。
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におう、は自動詞しかなかった!
これを書いたあと、気になって“におう”という言葉をちょっと調べてみました。
すると、これ、自動詞しかないんですねーー
例文として、
“匂う”では、「朝日ににおう山桜花」
“臭う”では、「君、酒を飲んだだろう、ぷんぷん臭うぜ」(←笑)
が載っていました。新明解国語辞典より
つまり、“におおう”というのは有り得ない、てことになりそうです。
いや待てよ、走ろう、ってあるな。 。。
ということは、におおう、は、自らにおいを発しよう、てことか。。。
でも、そんなことって。。。
金田一先生、助けて~
私、ふつうに
“この花すっごくいいにおいだよ。におってみて”
と、 他動詞として使ってました。
実家ではまわりもそうだった気が。
“かずむ”が方言だとは知っていたので、すこし気取った(?) シーンでは標準語をしゃべってるつもりで使ってました(笑)。
でも東京でも使ってたはずなのに誰からも指摘されなかったのは なぜだろう。。。
それはそうと、標準語では他動詞としては“嗅ぐ”しかないんですかねーー
(ちなみに、“におわす”、“におわせる”、というのはちゃんと辞書にも載ってる他動詞ですが、意味ちがいますよね?)
“嗅ぐ”って、なんか私としてはいいにおいのときは使いたくないコトバなんですが。
鼻をクンクンさせている映像が頭にうかんで少し下品だし。
“犯罪のニオイを嗅ぎつける”、とか連想して。
いいにおい、てやっぱり、“匂い立つ香気”のように、むこうからにおってきてほしいですね。
そしてそれをエレガントに鼻に吸い込む。。。
そう、“かぐわしい香りを鼻にすいこむ”、
これにふさわしいコトバって ないもんでしょうか。。。
そうなるとやっぱり、
“におぐ”っていまのところセカンドベスト、なのかも。
いいにおいといやなにおいの区別はないみたいですが。
“におぐ” と、全部真面目に発音すると口の中がねちゃねちゃしてくる気がするのが欠点ではありますが、 活用で戸惑うことはなさそうだし、 上品なテイストもほんの少し持ち合わせてて。(にお、の部分まで。笑)
ぜひとも日本中に広まってほしいものです。
それにしても“におぐっ”との出会いでこんなににおいに関するコトバ に対する考察が深まるとは考えてもいませんでした。
思うのですが、このコトバとの出会いが“においでみて” だったら、
「ん?」
と思いながらも「空耳かな? 」と、聞き流していたに違いありません。
(前述のように、私もこういう場合は“におってみて” と言うので、ちょっと似てる。)
でも、直球で、言い切り、終止形。
そしてあの何の邪心もない明るい声ではっきり 聞いてしまったのでこういう展開になってしまいました。
少年よ、ありがとう。
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★京都の帽子屋さん*帽子屋ポピンズ 帽子プロデューサー。
★自身が、帽子が苦手だった経歴をもつ。
★1000人以上の女性からヒアリングしてわかった、”多くの人に似合う帽子”をプロデュース。
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ブログすごく素敵になっていてびっくりしました!!
コメントの返信もマメですね〜
最近の匂いに関するエピソード
私はこの前ドクダミの大量に生えているところを通った時、そのむせ返るような香りから、雑草で夢中になって遊んでいた子供の頃を思い出して、懐かしいような切ないような気持ちになりました。ドクダミは凄い匂いだけど、その姿は気品があってとても好きです。匂いがあんなでなければ家に飾るのに、と思います。
あと、最近パソコンで長時間作業しなくちゃいけない時に目がとても疲れてしまうので、視覚以外でパソコンが使えるとしたらどこがいいかなと考えた時に、家の中では食事以外で殆ど使わない嗅覚が一番良いのではないか、という結論に自分の中でなりました。ただ徒然に考えただけの事です。
「におぐ」入れるつもりだったのになんか書くの終わってしまった。笑
マカさま
コメントありがとうございます!
どくだみ。。。大量にあったらたしかにイヤかも。
そんな私でも、あのカサブランカだけは、1本でも無理です。
臭いがあんなでなければ飾る花、それは私にとってはカサブランカですわ。
そしてあの臭い(あえてこの字を使おう)がガマン出来ない人が少数派だというのには未だに合点がいきません。
パソコン画面を鼻で見る。。。画期的!そんなことが出来ればいいですねーーーっ笑
目隠ししてパソコンの前に座って平然と作業してたらみんなびっくりですね。
以前「科学大好き土曜塾」で、うどんを5つの感覚で味わう実験があり、
聴覚に当たった子が、目隠し&鼻つまみして「うどんを聞いていた」姿を思い出しました。
ゆずしおさま
その後“寝り”のことが頭から離れなくて困っています。
他にも2文字で“蹴り”とか“見り”とか言うの?
“やり”にはほとんど違和感ないけど
“きり”はややこしいぞ。
“着なさい”ならば“着り”で、 キリッ
“切りなさい”なら“切りり”だね。 キリリッ
おーなんて役に立つブログなんだ~
ゆずしおさま
命令形っておもしろい方言が多いよね。
山梨の友達が自分のおじいちゃんに“寝てろっし”って言ってて
びっくりしたことがあります。
あと、VOWに載ってておかしかったのは
北海道の“一万円集めれ”。
スケバン(!)が部下に恐喝をやらせたというニュース記事なんだけど、
もし私が部下だったら、怖いけど笑ってしまって、さらに成敗されそう。
さっきの「り」も、「寝り」と「食べり」は、少し対象を慈しんでる
かんじがあるけど「読みり」は、笑える~。
それ風にいうと、
「かずみり」「におぎり[絵文字:v-375]」になりますね。(←もういいって)
「訓・漢」読みって、「訓・音」読みのまちがい?
名前の場合は、当て字ばっかりで訓も音もようわからんのだけど
(たとえば“美”なんか、“み”と読むなどどこにも書いてなかった
・・・by大修館新漢和辞典)
推測するにお父様の名前は“美一(よしかず)さん”あたり?
レンラクマツ
しかしこの返信を書くのに
何時間もかけてしまった私って一体・・・[絵文字:i-202]
でも自称日本語ハンターの私はこんな苦労(?)など厭いませぬよ。
kayokoさま
> 「かずむ」と、参観者一人で「におぐ」に頭ぐるぐるさせてるpoppinsさんを想像して、これまた笑ってしまいました。
でしょでしょ?
ったく、爆笑の渦に巻き込まれるはずが・・・
一人相撲をしてました。決まり手は“肩透かし”!
自分でひとコマまんがを書いて楽しんでおります(笑)。
> 「かずんでみて」の「におぐ」版はなんていうのかな…口に出すと余計におかしくって^^
それは、「においでみて」。
このへんでは「においでみー」ですよ。
京都に1年半住んでたけど、会話に「におぐ」が登場したことは
なかったっすね~。
ちなみに大阪南部の従妹は「寝なさい」というのを
「寝り」と言います。
これは「あり・おり・はべり・いまそがり」の類か?
と思いましたが、単なる命令形なんですね。
活用範囲は広く他にも「食べり」「読みり」等
数々の命令形があるようです。
なので単になまってるだけかと。
私の場合の「かずみ」は、父の名を「訓・漢」読みから
「漢・訓」読みにして後から漢字をあてたようです。
なにか雅なものがちらついてるわけではありません。
名づけ方法としては、先に音→テキトーにそれらしい字をあてる
という今時のDQNネーム(キラキラネーム)とさして
変わりないようですね。
「かずむ」と、参観者一人で「におぐ」に頭ぐるぐるさせてるpoppinsさんを想像して、これまた笑ってしまいました。
「かずんでみて」の「におぐ」版はなんていうのかな…口に出すと余計におかしくって^^
catさま
褒めてくださって光栄です。
この“におぐっ”あたりの一連の記事には相当時間をかけましたよ(笑)
しかしパソコンって推敲するのに最適だね。(あ、文字入力のことね)
昔は、紙に下書きして清書にパソコンを使ってて笑われたものです。
今は切り取りとかペーストを駆使してあーでもないこーでもないと
がんばってますよ。
ところで“におぐ”というコトバって可笑しくない??
今度“におぐ”について語りましょうね(笑)
ポピンズさん(上段コメント「かよみさん」の呼び名を拝借させていただきました!)
さすが、帽子屋さんをなさっているだけに、独特の感性をお持ちで・・・+文学の香りがします。
もしかして、帽子屋さん、そちらの道に進んでも成功したのでは?と思うほど、この「におぐっ」の記事以外にも、随所に素敵な感性と文才(素人Judgeですが!)が散りばめられていると思います。また、フレッシュな切り口での記事、期待してます。
oreiriaさま
方言ならば方言のような顔をして、私の日常生活に
そっと寄り添ってきてほしかったです。。
気がつけばそこにいた、という風に。
不意をつかれて目をシロクロさせてた自分。自分で想像しても笑えてくる~
まったく、うらむぜ少年。
あ、さっき感謝したばっかりだった。
かよみさま
週末の、名残惜しいお休みのひとときに、
全く癒やされない長文を真面目によんでくれて
ありがとうございます。
すぐに応用して使ってもらい、よろこんでいます。
使い方、あってますよーー!
おいしいものでも口直しに食べて、明日への活力を
養ってくださいな。
おちついたらまた訪問して、“かずむ”の考察などもコメお願いします!(?)
もはや方言の域ですな・・・
良ければこちらをどうぞ
もう更新はされてないけど、方言の検索くらいはできると思うよ。
http://hougen.atok.com/
ちなみに京都はこっち↓
http://hougen.atok.com/kyoto/db/
さすが文系のポピンズさん、考察が深いですね。
一度すらっと読んだだけでは完全に理解できない、感覚派の私・・・。
また読みにうかがいます。
最近においだいいにおい:一夜干しのいかの炙り(呼子の朝市のおみやげ)